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ブルー・アイランド先生の音と絵の交叉点 25
絵と文 青島 広志
ボロディン(1833-87)の
「中央アジアの草原にて」(1880)と
アンドレア・ポッツォ(1642-1709)の
「聖イグナチオ・デ・ロヨラの栄光」(1691-94)よりアジア
 美術鑑賞の難しいところは、自国に居るだけでは実物を見る機会が少ないことであろう。それでも有名な作品は数年に一回、鳴り物入りでやって来ることがあるが(何とミロのヴィーナス、モナ・リザ、一角獣の壁掛けまで!)、絶対に見られないのは壁画である。建築物と一体になっているからだ(楽器ではオルガンに当たる)。まず大きさが判らない。ましてや臨場感がない。画集で見る場合は一頁に収まる端小図か、部分的な拡大図しかないのである。画家は建築家としての立場から、 照明や外光の関係を考慮している筈だが、 それこそその場に行ってみないと体験出来ないのである。
 観光の眼玉めだまになっているシスティナ礼拝堂などは、ローマに行った人間は必ず行くから、かなり知られているが、あまりの人出と、監視員がせかすので「すごかった」という印象しか残らない。そして同じローマのサンテーニャツィオ大聖堂の天井画は実見した人が少ないのである。しかしこれは必ず見るべき大傑作だと思う。その遠近法の素晴らしさ、人物の誇張された身振り、発想の奇抜さ、フレスコならではの明るい色彩は、いつまで見ても飽きることはない。首が痛くなるのを除けば・・・・・。
 とくにキリスト教(イエズス会)が、四大陸を席捲して行く様子を描いた部分は生命力に溢れていて、その躍動感を描き切ったデッサン力に圧倒されるのだが、とくに我々日本人にとってはアジアの部が面白い。フランシスコ・ザビエルが上方から見降ろすのはラクダに乗った若い女性で、二人の半裸で足枷に繋がれている壮年男性(釈迦と孔子)を踏みつけている、各々の信者にとってはとんでもない話だが、容貌のイメージが全く違うので笑い話で済むだろう。作者は同会の修道士でもあり、舞台背景画も描いている。オペラ制作者としては是非スタッフに参加して貰いたいところだが、オラトリオ専門と言われるかも知れない。
 この作品に対応する音楽は、やはり「中央アジアの草原にて」になるだろう。 ロシア五人組に属し、医大教授の化学者だったがオペラ「イーゴリ公」などの大作を残している。 この交響詩は始め皇帝の祝祭行事で伴奏音楽として書かれたもので、大味おおあじではあるが、二つの異なる旋律(東洋の農民と中近東の隊商)がまず単独で提示され、後にそれが組み合わされるという手法を用いている。管弦楽法は手慣れており、どこで習得したのだろうか。
青島 広志 1955年東京生。作曲・ピアノ・指揮・解説・執筆・少女漫画研究など多くの分野で活動。東京藝術大学講師を41年務め、多くの声楽家を育てる。日本作曲家協議会・日本現代音楽協会・東京室内歌劇場会員。著書・出版譜多数。